龍胆の花と葉を象った文様より転用したものである。葉が笹に似ているところから笹龍胆ともいう。龍胆は、秋に藍色の美しい花を咲かせる。このため、平安時代から賞美されていたことが『源氏物語』『狭衣物語』などに見られる。また、『枕草子』には、その花が秋風の立つなかで、群芳におくれて開くので人々の観賞心をひいたと記されている。
家紋の初めは明らかではないが、中院通方がこのころに著わした『餝抄』には、中院家の家紋として挙げられ、また『大要抄』にも、村上源氏の出である中院宗輔の車文としてのせている。このように、龍胆紋は村上源氏の代表的な家紋となり、その一門の中院家や久我家が用いるようになった。また、このころから、宇多源氏も龍胆を家紋とするようになった。村上、宇多両源氏の流れではあるが、武家の間では『吾妻鏡』『太平記』などには何の記載も見当たらないので、いずれも公家の間のみに用いられたと考えられる。
江戸時代にはいると、これが誤り伝えられて、龍胆紋は源氏の家紋のように考えられ、清和源氏の子孫と称するものが競って家紋とする傾向が生まれた。
龍胆紋は、普通は三花五葉を基本とするが、まれに二葉(二つ葉龍胆)、三葉(三つ葉龍胆)を用いることもある。ほかに、枝や蔓をつけたもの、それらを寄せて車状にした久我龍胆、特殊な形状を配した蟹龍胆、杏葉龍胆、龍胆菱など。
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