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【神使】−神のつかわしめ−
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神社には神使と呼ばれる動物がいる。
「神のつかわしめ」と呼ばれ、神の眷属、御先神とも考えられ、神に先駆けて出現し、あるいは神の意志を知る兆しとされる。
多くは神に縁故ある鳥獣虫魚が固定化したものだが、江戸時代の吉備津神社宮司だった藤井高尚によると「はじめは一匹二匹と境内に侵入し、追わずにいたのが数が増えたのだろう」『松の落葉』ということ。
神の使いの初出は『日本書紀』の景行天皇の条。伊吹山の荒ぶる神の話を聞いた日本武尊が山へ出かけ大蛇となった山神に遭遇。日本武尊は、その大蛇を「荒神之使」と考えた。

以下に、有名神社の神使を示す。

 【日吉、山王、日枝】
 比叡山の麓、日吉大社を本宮とする系列神社。天台による山王一実神道を根本とする。

日吉大社

 神使: 出典『神道事典』だがあまりにも有名だ。
  • 山王では真猿といい、「魔去る」という。
  • 江戸末期の儒学者 茅原定の『茅窓漫録』によると、月行事の社・猿田彦命との縁。
  • 鎌倉時代の山王神道の理論書『耀天記』には、「神は申に示す」とあり、釈尊は猿の姿で現れる、猿は五行思想の金気で、不滅の仏身に近いからと。
  • 山に住み、里を訪れる動物で、山の神(日吉大社祭神・大山咋神)の使い。
  • 庚申の猿(三猿など)も基本的には天台系の猿らしい。

東京日枝神社の狛猿

東京日枝神社の狛猿

 神使:鹿 出典『神道辞典』

 神使: 出典『神道事典』

 神使: 出典『神道事典』

 【稲荷】
 京都伏見大社をを本宮とする系列神社。稲の神、豊饒の神、商売の神、その他現世利益の神。

伏見稲荷大社

 神使: 出典『神道事典』だがあまりにも有名だ。
  • 春になると山から里(田)に降りて来る、豊作をもたらす稲の神。
  • 稲荷神を御饌津(ミケツ)神といい、音の類似から三狐の字をあてたという説がある。
  • 王子稲荷は関東の稲荷神社の総元締めというお宮。毎年、大晦日の夜に関東一円の稲荷神社から狐たちが集まって参詣したという伝承が残っている。王子稲荷の狛狐は鍵を持っているが、これは関東の稲荷を管理していたという証。参詣する狐たちは、まず装束の榎と呼ばれた大きな榎の下で装束を調えてから参詣したという。

伏見稲荷の手水の逆立狐

装束榎の狐

装束稲荷の鍵付き狛狐

 【八幡】
 宇佐神宮、石清水八幡宮、鶴岡八幡宮を本宮とする系列社。源氏の氏神で武神。

宇佐神宮

石清水八幡宮

鶴岡八幡宮

 神使: 出典『神道事典』。
  • 江戸末期の儒学者 茅原定によると、八幡(やはた)の幡(ハタ)から鳩(ハト)への変化。『茅窓漫録』
  • 縁起として、小倉山の麓に八つの頭を持つ鍛冶の翁が居た、大神比義が見に行くと金色の鷹となり、金色の鳩に変化した。
  • 荻生徂徠によると、単純に「はちまん」の「は」から。『南留別志』
  • 『和漢三才図会』には、石清水八幡宮の勧請地を鳩峯と記している。

酒田市八幡神社の屋根に向い鳩

遠野八幡宮の屋根に向い鳩

 【鹿島】
 鹿島神宮を本宮とする系列社。国土平定の武神。

鹿島神宮

 神使:鹿 出典『神道事典』。
  • 香島と書かれていた社名が、鹿島と書かれるようになった理由とする説がある。

鹿島神宮の鹿園

 【春日】
 春日大社を本宮とする系列社。藤原氏の氏神。

春日大社

 神使:鹿 出典『神道事典』。
  • 江戸末期の儒学者 茅原定によると、祭神が、鹿島から鹿柵(かせぎ)に乗って来たから。『茅窓漫録』
  • 荻生徂徠によると、単純に「かしま」の「か」から。『南留別志』

春日大社の手水の鹿

春日系 吉田神社の鹿像

春日系 大原野神社の狛鹿

春日系 滋賀小槻神社の鹿像

 神使: 出典『神道事典』。

 【熊野】
 紀州熊野三山からの勧請社。出雲熊野大社については未調査。

熊野本宮大社

熊野速玉大社

熊野那智大社

 神使: 出典『神道事典』。
  • 神武東征の折り、先導したヤタカラス ミサキ神。
  • 熊野のミサキ烏信仰、山の神の使い、祖神に使わしめ。
  • 烏は日神の使い。太陽の中の三本脚の烏が不死の草を食べる話がある。『酉陽雑俎』中国の唐代。
  • 三本足は、熊野三党(宇井・鈴木・榎本)を表すとも。

熊野牛王神符 カラス文字で書かれた御神符 熊野本宮大社 八八羽

熊野速玉大社 四八羽

熊野那智大社 七二羽
 【天満】
 太宰府天満宮、北野天満宮の系列社。学問の神・菅原道真公を祀る。

太宰府天満宮

北野天満宮

 神使: あまりにも有名。
  • 道真の遺骸を牛車に乗せて運んでいたところ、牛がとどまって動かなくなった。道真の意志だと判断し、その地に埋葬したという。
  • 天満宮には牛像のある神社は多いが、天満宮とは無関係に、撫で牛の像がある場合もあり、また牛神を祀っている場合もある。

福岡・水鏡神社

菅原道真公誕生地・菅大臣神社
 【厳島】
 安芸の宮島、厳島神社を本宮とする系列社。

厳島神社

 神使:鹿 出典『神道事典』。
  • 飯田道夫氏によると、厳島神社を再興した平清盛によって、藤原家氏神の春日の鹿と平安仏教の雄・天台の猿を連れてきたのではないかという。

宮島の鹿

 神使: 出典『山宮考』柳田国男

 神使: 出典『神道辞典』

 【弁財天】
 弁財天を祀る神社。
 日本五弁天として、安芸の厳島、大和の天川、近江の竹生島、相模の江の島、陸前の金華山が有名。また、富士山(浅間神社か?)を加えて六弁財ともいう。

竹生島神社

竹生島弁財天

金華山神社、鹿もいる

金華山弁財天

 神使: 出典『神道事典』。
  • 弁財天はインド神話の河神のサラスヴァティという女神で、日本に入ってきてから、川の流れの音を受けて音楽の神、美音天、妙音天、あるいは大弁才功徳天と呼ばれた。インドでは上地や作物、人間の生命などすべての物の根源をつかさどる水神として信仰された。その一方で、川の流れの妙音からの連想で、音楽や言語(弁舌)を生み出した神と考えられ、言語が学問や知恵を育み、ひいては財福をもたらす力を持つとされるようになった。
  • 蛇が財宝を守る話は世界各地にある。
  • 弁財天は宇賀神と習合し、あるいは夫婦神と考えられた。米倉中の蛇(鼠を退治)を宇賀神という。
  • 川の神から、蛇が連想されたのか。農民の間で古くから信仰されてきた水神が、仏教の影響を受けて次第に弁天様へと変わっていき、やはり在来の食物の神である宇賀神と習合し、農作の守り神としての性格を持つようになった。つまり、農村での弁天様の霊力は、都市のように金銀財宝ではなく、主にヘビ=水神=豊作の神=食物の神である宇賀神という形で信仰された。
  • 『和漢三才図会』に、但馬守平経正が竹生島で琵琶を弾いた時、白狐が走り去ったといい、ある人は白蛇が出現したという。白狐というのは宇賀神が稲荷神と考えられたものだろう。

狛蛇吽形

竹生島龍神拝所

狛蛇阿形
 【伊勢、神明】
 伊勢の神宮を本宮とする系列社。

内宮

外宮

 神使: 出典『庚申信仰』。
  • 天の岩戸で、長鳴鳥(鶏)を集めて鳴かせ、天照皇大神の出現を願った。
 神使: 出典『神道辞典』

 神使: 出典『日本書紀』
  • 皇極四年、難波遷都の前兆として、あちこちで猿のうめくような声を聞いた。時の人は「是れ伊勢大神の使なり」と言った。
 【出雲】
 出雲大社からの勧請社。

出雲大社

 神使: 出典『日本の神様を知る事典』。
  • 神在祭、先導役としての龍蛇。
 【諏訪】
 諏訪大社からの勧請社。

諏訪大社本宮

諏訪大社前宮

諏訪大社秋宮

諏訪大社春宮

 神使: 出典『神道辞典』。

 神使: 出典『神道辞典』。
  • 『和漢三才図会』に、諏訪湖が凍結して氷の亀裂が走るのは、神獣(狐)が走るのだとある。。
 神使: 出典『神道事典』。

 神使: 出典『日本の神様を知る事典』。
  • 諏訪明神の本地、甲賀三郎が蛇の姿となったという伝説があるが…。
 【三島】
 三島大社からの勧請社。

三島大社

鹿がいたが・・・

 神使: 出典『神道事典』。
  • 三島大神は「大通智勝仏」を本地としていたが、「大通智勝仏」は虚空蔵菩薩の威力を表す仏名。虚空蔵菩薩の使いが鰻。
 神使: 出典『神道辞典』。

 【富士浅間】
 静岡側富士山麓の神社。

富士山本宮浅間神社

 神使: 出典『山宮考』。
  • 窪徳忠氏によると、富士登山の指導者的立場である御師が天台派の修験者。よって庚申信仰と融合した、つまり山王の猿。
 【松尾】
 松尾大社からの勧請社。山の神、酒の神。

松尾大社

 神使: 出典『日本の神様を知る事典』。
  • 江戸末期の儒学者 茅原定によると、亀尾山から。『茅窓漫録』
 【住吉】
 住吉大社からの勧請社。海の神、航海の神。

住吉大社

 神使: 出典『和漢三才図会』。

 神使: 出典『神道事典』。

 【気比】
 敦賀の気比神宮。

気比神宮

 神使: 出典『日本の神様を知る事典』。

 【羽黒】
 出羽三山の羽黒権現を勧請した神社。

出羽神社

 神使: 出典『神道事典』。

 【愛宕】
 京都愛宕山の愛宕神社からの勧請社。

亀岡の本宮愛宕神社、愛宕神社の元社

 神使: 出典『日本の神様を知る事典』。
  • 和気清麻呂が愛宕山に寺を建てたという。和気清麻呂の猪(下記 護王 参照)と関係あるのか?
 神使: 出典『日本の神様を知る事典』。

 【三峯】
 三峰神社からの勧請社。

三峰神社

 神使: 出典『日本の神様を知る事典』。


鳥居前の狛狼

山門前の狛狼(狐じゃないよね)

 【龍田】
 斑鳩の龍田神社。三郷町の龍田大社については未調査。

龍田神社

 神使: 出典『庚申信仰』。
  • 謡曲「龍田」に「もみじ葉散り飛ぶ木綿付鳥…」とある木綿付鳥は鶏のこと。

龍田神社の手水の鶏

 【護王】
 京都の護王神社。

護王神社

 神使:
  • 祭神・和気清麻呂公が宇佐八幡の神託により、弓削道鏡の野望をくだいたが、その恨みから大隅へ追いやられた。その途次、宇佐八幡へお礼詣りに向かったが、足を痛めてしまった。すると三百頭の猪が公を取り囲み、宇佐八幡までの道のりを無事に案内した。

境内の霊猪

境内の霊猪

 【調】
 埼玉の調(つき)神社。

調神社

 神使:


調神社の手水の兎


この他にも、二荒山の蜂、菅生石部神社の蛇と亀、迩志神社の龍蛇、狭野神社の雉、大椋神社の青百足、鷲子山上神社の梟、與止日女神社の鯰など、各地各社固有の神使を持つ神社は多い。

また、白兎神社のように動物を祭神とするものは神使としていない。同様の理由で三輪大神(蛇体)も。


最終更新日:2013/10/09
【 神使:神のつかわしめ 】

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