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阿射加神社
あざかじんじゃ
三重県松阪市大阿坂町670  Zenrin Data Com Maps display !!


十六菊

式内社 伊勢國壹志郡 阿射加神社三座 並名神大
旧村社

御祭神
猿田毘古大神

三重県松阪市にある。
松阪駅の西9Kmほどの大阿坂町に鎮座。
松阪市の北西に位置し、阿坂城のある阿坂山(現、枡形山312m)の東麓、
伊勢道松阪I.C.入口から北へ2Kmほどの場所。
58号線を北上し、JAの横を西へ入ると当社の社域が見えてくる。

境内入口は東向き(正確には北東東向き)。
数段の階段をのぼると参道入口に鳥居が立っており、
鳥居の右脇に「禁殺生」「阿射加神社」と刻まれた石柱。
伊勢周辺の古社では、同様の石柱が社前に立っているようで、
参道の由緒書きによると、享保九年(1724)紀州家より贈られたものらしい。

鳥居をくぐり、木々の茂る長い参道を進むと境内社や鳥居、御神木。
参道の先に割拝殿があって、その奥が広い境内。
その境内の西端に鳥居が立っており、階段を上ると神門。
神門が拝殿を兼ねた構造で、神門の前、階段下に賽銭箱が置かれており、そこで参拝する形式。

神門の奥、玉砂利が敷き詰められた場所に、瑞垣に囲まれた本殿が鎮座している。
由緒書きによると一殿三扉の唯一神明造で、三柱の神を祀っているような構造。
左手の少し高い場所から瑞垣の中を見てみると、社殿の前面にシートが被せられており、
何かの工事中だったのだろうか。また垣内の本殿の周りにいくつかの小祠があるようだ。

参拝は三月中旬。
式年遷宮を終えた伊勢神宮への参拝の帰りに立ち寄ったが、あいにくの雨。
ただ当社のように緑の多い神域では、雨の日の参拝も心地よい。

式内社・阿射加神社三座に比定される神社であり、
『続日本後紀』に承和二年(835)十二月甲申
「奉授阿耶賀大神從五位下。此神坐伊勢國壹志郡」とあり、
『文徳実録』に嘉祥三年(850)十月辛亥「伊勢國阿耶賀神從五位上」、
斉衡二年(855)正月壬寅「以伊勢國阿耶賀神。預於名神」、
斉衡二年(855)正月丙午「伊勢國阿耶賀神…並加從四位下」、
『三代実録』に貞観元年(859)正月廿七日甲申
「伊勢國…從四位下阿射加神從四位上」とある古社。

『皇太神宮儀式帳』によると、
倭姫命が皇大神の御神霊を奉じて美濃国から伊勢国に入り、
桑名・鈴鹿の宮を経て「壱志の藤方の片樋宮」に遷った時、
阿佐鹿の悪神を平定した阿倍大稲彦をお供とした。
また、壱志県造等の遠祖である建呰子(たけあざこ)に国の名を問うたところ、
『宍往呰鹿国(ししゆきあざかのくに)』と答えたという。

『倭姫命世記』などによると、
安佐賀の山の嶺に荒ぶる神がおり、宇治の五十鈴の川上の宮へ行くことが出来なかった。
倭姫命がこの荒ぶる神の所業を天皇に申し上げるため
大若子命たち三人を朝廷へ遣わされたところ、
天皇は大若子命に命じて様々な贈り物を荒ぶる神に捧げ、
ついに安らかに鎮めることができ、安佐賀に社殿を建て、
荒ぶる神である伊豆速布留神を祀ったのが当社の起源。
垂仁天皇十八年四月十六日のことであるという。
その後、応永年中(十五世紀)伊勢国司北畠満雅が阿坂山に砦を築いた時、
山上から現社地に遷座したとも伝えられているらしい。

この伊豆速布留神が当社の祭神・猿田毘古大神のことであるという。
現在の祭神は猿田毘古大神一柱なのに本殿に三扉があるのは、
『古事記』に猿田彦大神は阿耶訶に坐していた時、
比良夫貝に手をはさまれて海中に沈み溺れてしまった。
そのとき水底に沈んだときの名を「底度久御魂」、海水に泡が立つときの名を「都夫多都御魂」、
水面に出て泡が開くときの名を「阿和佐久御魂」とあり、
猿田彦大神の三つの御魂を祀っているという。

これら猿田彦大神の記述は伊勢・志摩の海人族との関係を示すものだろうか。
綿津見神墨江三前大神のように、
海に関る神は、三つの形態をとるということだろうか。

また本殿に龍天大明神、その北側(右)の小祠が神明社、南(左)が熊野社とする資料もあり、
猿田彦大神の三妃を祀るとする説や、伊豆速布留神・大国主命・天日別命とする説など。
いずれにしろ、延喜式に阿射加神社三座とあり、三座の神を祀っていると思われる。

ただし、阿射加神社三座に関しても諸説あり、
当社に三座とする説の他に、阿佐加山上の社が分離して、
小阿坂町に鎮座の同名社と他の一社の三箇所を合わせて三座とする説もある。

この場合のもう一社に関しても、一志村(嬉野一志町)の産土神、大阿坂町の浄眼寺付近、
嬉野黒野町付近にあった可能性を示唆する資料もある。

ところで、荒ぶる神・伊豆速布留神は道行く人が百人いれば五十人殺すという恐ろしい神。
荒穂神社の鎮座する佐賀県の基山にも、この半分殺す荒ぶる神の話があるのだが、
阿佐賀と佐賀がちょっと気になる。

境内社に関して、由緒書きに「垣内末社 六社 攝社 三社」とある。
『式内社調査報告』によると、大日孁神社、宇加日子神社、速玉男神社、
天忍日神社、建皆古神社、大国主神社、奥津比古神社、大若子神社の名が載っている。
境内右手にある境内社が当社に縁の深い大若子命を祀る摂社・大若子神社だと思う。
この社も一殿三扉あり、素盞鳴尊、誉田別尊、伊弉冉尊、天児屋根命、大宮比賣命、八王子神など、
周辺の旧無格社などが合祀されている。
『平成祭データ』には天日別命が合祀されているとある。

当社の神紋に関して、『三重県神社誌』には「不詳」とあるが、
由緒板の背景に十六菊紋が描かれていたので、とりあえず載せておく。


社頭。レンズに雨粒

参道入口

この中に石碑

「禁殺生」

「阿射加神社」

参道

参道の境内社

参道にも鳥居

御神木

参道から境内

参道から境内

割拝殿

境内

鳥居の奥、瑞垣の内に本殿

本殿

本殿

本殿

右手の境内社

境内社

境内右手の宮池

延喜式 阿射加神社由緒
神明造 村社 阿射加神社 従三位
主祭神猿田毘古大神
松阪市大阿坂町
境内四町三反八畝十五歩
山岳四町一反六畝十五歩
参道二五〇メートル
由緒 第十一代垂仁天皇十八年夏四月、皇女倭姫命が天照大神の神霊を祀 る地を探し求める途中阿佐賀の地を訪れ荒ぶる神伊豆速布留大神を大 若子命をもちて鎮めさせ阿佐賀山の嶺枡形山に社殿を造り種々の幣物 をもたらし祭ったのがこの神社と言われる(神道書、倭姫世記)阿射 加神社は平安朝時代から社格の上からも朝廷から破格の崇敬を受け、 八三五(承和二)年従五位下、八五〇(嘉祥三)年従五位上、八五五 (斉衡二)年従四位下、八五八(貞観元)年従四位上、八六六(貞観 八)年従三位を伊勢国阿耶賀神に授け奉ると昇叙の記が見られ第六十 代醍醐天皇延長五(八九〇)年延喜式内大社の格に編入され延喜式神 名帳に伊勢国阿射加神社三座並名神大なり二八五座の内となる猿田毘 古神座阿耶訶と古事記にも見られる古社である。
伊勢国司北畠満雅應永年中阿坂山に砦を築く時に社地を山より今の地 に遷したと記されている。
享保甲辰(一七二四)年紀州家より禁殺生の石碑建贈ざれる。
安政丙辰十一月(一八五六)年国主紀伊御代により武運長久領内安全 の奉納が寺社奉行によって奉られている。
明治六年三月村社に列せられ同三九年十二月三重県告示第三八〇号を もって神饌幣帛料供進指定社となる恒例世多米志祭が一月に行われ 稲作の作柄を占う粥試が行われる神社の右側には龍天大明神の起源と 言われる宮池をもつ由緒ある神社である。
本殿 神明造一殿三座並名神大
掘立柱、高床式、堅魚木、千木(内削)
棟持柱を持つ唯一神明造りである。
垣内末社 六社 攝社 三社
主祭神 猿田毘古大神(伊豆速布留大神、龍天大明神)
底度久御魂
都夫多都御魂
阿和佐久御魂
一殿三座並名神大
猿田毘古大神は天孫降臨の時天ノ八衢に出られ、上は高天原を照ら し下は葦原の中国を光し迎になったとある。鼻の長さ七寸、背の丈七 尺目の大きさ八寸で鍾のごとくまなこの色赤酸漿である。
神位 第五四代仁明天皇 承和二年十二月(八三五年)従五位下
第五五代文徳天皇 嘉祥三年十月(八五〇年)従五位上
第五五代文徳天皇 斉衡二年四月(八五五年)従四位下
第五六代清和天皇 貞観元年正月(八五八年)従四位上
第五六代清和天皇 貞観八年十一月(八六六年)従三位

第六〇代醍醐天皇延長五年(八九〇年)式内大神社に編入され延喜 式神名帳に伊勢国阿耶賀神社三座並名神大とあり、臨時祭名 神祭二八五座の内となる。
昇叙の記が日本三代実録などの国史に見られる。

−境内由緒板を一部修正−



【 阿射加神社 (松阪市大阿坂) 】

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