[HOME] > [神社記憶] > [関西地方] > |
|
春日大社
かすがたいしゃ
奈良県奈良市春日野町160
|
|||
式内社 大和國添上郡 春日祭神四座 並名神大 月次新嘗 |
奈良県奈良市にある。
近鉄奈良駅から三条通を東へ500m。
169号線の交差点に一之鳥居。
典型的な春日鳥居で、日本三大木造鳥居の一つ。
残りの二つは、安芸の厳島神社、敦賀の気比神宮のもの。
一之鳥居から参道をまっすぐ800mに進むと神苑入口。
そこで少し右にそれて、200mほどに二之鳥居。
緩やかな階段を上ると、御蓋山の西麓に、南面した朱の楼門。
美しい廻廊に囲まれた境内がある。
廻廊に囲まれた部分を中院と呼び、廻廊の外は外院と区別する。
楼門をくぐると、正面に神拝所。通常の神社では拝殿にあたる施設。
神拝所の左手に授与所、右手は本殿特別参拝の受付がある。
ここから先へは、ここで受付を行い、中門の前まで進む。
中門の東西御廊に囲まれた内は、内院と呼ぶが、
四棟並んだ春日造本殿の他、幾つかの末社が鎮座。
中門の左手へ進み、内侍殿(移殿)の前を通ると、そこにも朱の末社がある。
全国の春日神社の総本社。
和銅二年、藤原不比等によって、
常陸国鹿島から藤原氏氏神・武甕槌命を勧請し、
春日神として祀ったのが創祀。
また、神護景雲二年に社殿の造営となり、
香取神(經津主命)・枚岡神(天兒屋根命)を合祀し、
少し遅れて比売神を合祀し、四柱を祀る官社となった。
もともと春日の地に祀られていた地主神は、
廻廊隅にある榎本社として祀られている。
地主神は、春日地方の旧勢力であった、
和邇氏一族の小野氏が奉祭したと考えられているが、
この経緯に関して以下の伝承がある。
常陸から遷って来た春日明神が、
春日山の神に、山を三尺借りたいと申し入れた。
耳の不自由な春日山の神は、詳細を聞かずに承知したが、
春日明神は、山全体の地下三尺であるとの理由を付け、
結局、山全体を領するようになったという。
春日明神は鹿に乗って影向したとされることから、
鹿は神鹿として保護され、境内一帯には鹿が多く生息している。
また、春日山は平城京の水源にあたり、
山中には雷神・水神の鳴雷社も祀られている。
春日山は、承和八年より狩猟・伐木が禁止され、
現在も春日原始林として入山が禁止されている。
第四殿の比売神に関しては以下のように諸説ある。
天照大神説。天児屋根命后説、三女説、
天児屋根命母神(許登能麻遅比売命)説。
勧請元の枚岡神社では、天児屋根命の后神らしい。
春日大社には、摂社五社の他、
本社内院に七社、中院に八社、外院に十七社。
さらに、若宮内院(垣内)に二社、若宮外院に七社、
飛地境内に十五社の計五十六社の末社があり、
摂末社合わせて六十一社が存在する。
各末社の位置は大まかには以下の通り。
ただし、本社の外院と若宮外院の区別がよくわからなかったので、
区分は若干違うかもしれないが、雰囲気は以下のようなものだと思う。
社名 | 祭神 | 備考 |
摂社五社 | ||
若宮神社 | 天押雲根命 | |
本宮神社 | 武甕槌命 經津主命 天兒屋根命 | 式内社 御蓋山山頂(一般参拝不可) |
榎本神社 | 猿田彦大神 | 式内社 廻廊南西隅 |
水谷神社 | 素戔嗚命 大己貴命 奇稲田姫命 | |
紀伊神社 | 五十猛命 大屋津姫命 抓津姫命 | |
本社内院七社 中門御廊内 | ||
手力雄神社 | 天手力雄神 | 本殿東三社の南から一社目 |
飛来天神社 | 天御中主神 | 本殿東三社の南から二社目 |
八雷神社 | 大雷神外七雷神 | 本殿東三社の南から三社目 |
栗柄神社 | 火酢芹命 | 本殿北四社の東から一社目 |
海本神社 | 大物主神 | 本殿北四社の東から二社目 |
杉本神社 | 大山咋神 | 本殿北四社の東から三社目 |
佐軍神社 | 布津之靈 | 本殿北四社の東から四社目 |
中院八社 楼門廻廊内 | ||
青榊神社 | 青和幣 | 神拝所東四社の北から一社目 |
幸榊神社 | 白和幣 | 神拝所東四社の北から二社目 |
穴栗神社 | 穴次神 | 神拝所東四社の北から三社目 |
井栗神社 | 高御産靈神 | 神拝所東四社の北から四社目 |
岩本神社 | 表筒男命 中筒男命 底筒男命 | 中門の西 |
多賀神社 | 伊弉諾命 | 本殿西側垣外 |
椿本神社 | 角振神 | 本殿西側垣外 |
風宮神社 | 級長津彦神 級長津姫神 | 本殿西側垣外 |
若宮内院二社 若宮垣内 | ||
通合神社 | 中臣祐房朝臣 | 若宮垣内北側 |
手力雄神社 | 天手力雄神 | 若宮垣内南側 |
若宮外院七社 若宮垣外 | ||
三輪神社 | 少彦名命 | 本殿と若宮社の間の道 |
兵主神社 | 大己貴命 | 本殿と若宮社の間の道 |
南宮神社 | 金山彦神 | 本殿と若宮社の間の道 |
広瀬神社 | 倉稲魂神 | 若宮社と紀伊社の間の道 |
葛城神社 | 一言主神 | 若宮社と紀伊社の間の道 |
三十八所神社 | 伊弉諾命 伊弉冊命 神日本磐余彦命 | 若宮社と紀伊社の間の道 |
佐良気神社 | 蛭子神 | 若宮社と紀伊社の間の道 |
外院十七社 廻廊外境内 | ||
大国神社 | 大国主命 須瀬理姫命 | 若宮社と紀伊社の間の道 |
金龍神社 | 金龍大神 | 若宮社と紀伊社の間の道 |
宗像神社 | 市杵島姫命 | 若宮社と紀伊社の間の道 |
住吉神社 | 表筒男命 中筒男命 底筒男命 | 春日奥山歩道に入ってすぐ道そば |
市ノ井恵毘須神社 | 事代主命 | 住吉神社横 |
船戸神社 | 衝立船戸神 | 斎館北側 |
総宮神社 | 伊勢・春日・八幡大神 | 斎館から水谷への道 |
一言主神社 | 一言主神 | 斎館から水谷への道 |
壷神神社 | 酒弥豆男神 酒弥豆売神 | 表参道神苑ちかく |
祓戸神社 | 瀬織津姫神 | 二之鳥居そば |
竃殿神社 | 興津彦神 興津姫神 | 廻廊西側 |
酒殿神社 | 酒弥豆男神 酒弥豆売神 | 廻廊西側 |
愛宕神社 | 火産霊神 | 駐車場近く参道 |
聖明神社 | 聖明神 | 駐車場近く参道 |
天神社 | 天常立尊 | 駐車場近く参道 |
浮雲神社 | 天児屋根命 | 駐車場近く参道 |
拍子神社 | 拍子神 | 県庁近く交差点 |
飛地境内十五社 | ||
鳴雷神社 | 天水分神 | 式内社 春日山林内 |
神野神社 | 甕速日神 火速日神 崇道盡敬皇帝 | 春日山林内 |
上水谷神社 | 春日四座 若宮 水谷神 猿田彦神 祓戸神 | 春日山林内 |
大神神社 | 大物主神 | 春日山林内 |
高山神社 | 春日四座 若宮 祓戸神 水谷神 | 春日山林内 |
赤乳神社 | 稚日咩神 | |
白乳神社 | 志那斗弁神 | |
手力雄神社 | 天手力雄神 | 橋本町 |
采女神社 | 采女命 | 猿沢池 |
野上神社 | 草野姫命 | 若草山南麓 |
石荒神社 | 火産霊神 | 野上神社同域 |
南市恵毘須神社 | 事代主命 | 南市町 |
高天市恵毘須神社 | 事代主命 | |
初宮神社 | 宮中八神殿 伊勢 春日 住吉神 | 鍋屋町 |
大福稲荷神社 | 大福稲荷大神 |
一之鳥居 | 二之鳥居 |
手水鉢に神鹿 |
楼門 |
廻廊の燈籠 | 神拝所 |
中門と東西御廊 |
本殿(後方から) |
春日大社 奈良市春日野町一六〇 関西線奈良駅三粁 祭神 (第一殿)武甕槌命 (第二殿)経津主命 (第三殿)天児屋根命 (第四殿)比売神 例祭 三月一三日 神紋 下り藤 建物 本殿春日造四棟(平安後期建・文久三年再建・国宝)幣殿・直会殿・着到殿・車舎・移殿(以下平安前期建・重文)宝庫(室町期建・重文)他二三棟 境内 二八四、〇〇一坪 末社 六一社 社宝 本宮御料古神宝類・若宮御料古神宝類(以下国宝)他国宝三四四点・黒韋威胴丸(重文)他重文九五点・神鹿・竹柏樹林・ルーミスシジミ蝶生息地等(以下全部記念物) 氏子 三、一〇〇戸 崇敬者 一四〇、〇〇〇人 神事と芸能 春日祭(勅祭・三月一三日・氏神祭の遺風を伝える祭祀で勅使がみずから神饌の御棚を奉奠し、饗饌・和舞見参・賜禄・拝舞等がある) 若宮おん祭(一二月一五日より四日間・懸鳥お渡式・御旅所祭舞楽・細男田楽・能楽=以上無文=がある) 由緒 諸国にある春日神社の本社。元明天皇 和銅二年、平城宮の造営に際して右大臣藤原 不比等が、鹿島神を氏神として崇敬し、天皇 及び皇后のために春日の三笠山に遷座、地名 によって春日神と称したのが創始である。本 殿は春日造と称する社殿が四宇並立し、第一 殿から第四殿まで前記の四柱を祭祀。称徳天 皇天平神護元年、鹿島社の封二〇戸をさいて 春日神によせ、神護景雲二年神殿の造営がな り、さらに香取神・枚岡神・比売神を遷して 合祀、藤原四所明神と称した。清和天皇貞観 年間に、二月・一一月の上申日が恒例の祭日 と定まった。同八年藤原良房が摂政のとき、 藤原朝臣須恵子を春日神および大原野神の斎 女とし、同一〇年勅して大和国騎兵四〇人、 執杖士二〇人をさし充て、春日斎女の社参の 威儀とした。さらに同一三年新鋳の銅印を斎 院に下した。延喜の制では四社とも名神大社 に列し、祈年・月次・新嘗の案上官幣に預か った。創立以来上下の崇敬があつく、天皇の 臨幸は数十回におよび、また藤原氏一門や衆 庶の崇敬参拝が多かった。そしてそのたびに 奉納された神宝・調度品・灯籠等の数も多く を数えた。神徳は春日曼荼羅・三社託宣・御 物春日権現霊現記となって現われ、全国に分 社が創立された。明治四年官幣大社に列した。 (神社本庁別表神社) −『全国神社名鑑』− |