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日前國懸神宮
ひのくま くにかがすじんぐう
和歌山県和歌山市秋月365
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式内社 紀伊國名草郡 日前神社 名神大 月次相嘗新嘗
境内 式内社 |
和歌山市秋月にある。和歌山電鐵貴志川線日前宮駅の北。
鳥居をくぐり、参道を北へ進むと、突き当たり。
左へ行くと日前神宮、右へ行くと國懸神宮がある。
正面には奥へ続く道があるが、結界されており、
一般の参拝者は進めない。何があるんだろう。
古社図を見ると、護摩堂や酒殿、多くの建物があったようだ。
資料提供 神奈備にようこそ |
創祀年代は不詳。
神武東征にあたり、天道根命を紀伊国造とし、
名草郡毛見郷に祀られたのが当社の起源であるという。
その後、崇神天皇五十一年、名草浜宮へ遷座。
さらに、垂仁天皇十六年、現社地に遷座されたという。
天照大神が天岩戸に隠れた時、思兼命の立案で、
石凝姥命によって鋳造された鏡を掲げて、
天照大神を招きだす作戦が実行された。
最初に造った鏡は、神達の御意に合わず、
再度作り直した鏡は、「美麗」であり、作戦に使用された。
ここに祀られている鏡は、その最初の「御意に合わない」鏡であり、
「美麗」な鏡は、伊勢神宮に祭られる八咫鏡である。
当社の起源は、神武天皇が天道根命を紀伊国造とし、
宝鏡を御霊代に、天照大神を祀らせたのがはじまりだが、
「失敗作」を祀っているというのが不思議だ。
このことについて、以下の話が興味深い。
天道根命は饒速日尊に随伴した神々の一柱である。
饒速日尊は、最初に降臨した神だが、
次に降臨した天孫瓊々杵尊の後裔神武天皇に恭順している。
日像鏡は最初に鋳られた鏡だが、意に合わず、
次に鋳られた八咫鏡は美麗であった。
さらに、瓊々杵尊には武神は随伴していないが、
饒速日尊には、三十二人の防衛、五部人、五部造、
天物部等二十五部人など、多くの神々が随伴し、
天道根命は武神の一柱であったと考えられ、
国懸神宮には、日矛鏡が祀られている。
これらを総合すると、
日前大神=饒速日尊、
国懸大神=天道根命(紀氏の祖)
と考えられないか。
『釈日本紀』には、『大倭本紀』曰くとして、
天孫降臨の際、鏡三面と鈴を奉じ、
一つの鏡は天照大神の御霊代・天懸大神、
一つの鏡は天照大神の前御霊(さきみたま)・国懸大神、
としている。
他の鏡と鈴は天皇の御食饌神となり、巻向の穴師の社の大神である。
伊勢神宮が内宮・外宮と分かれており、
内宮は天照大神、外宮は豊受大神を祀っている。
これは、日輪を象徴とする天空の神と
稲(農作)に関わる大地の神を祭ったものと考えられる。
日前國懸神宮に関しても、同様に、
天の神として日前があり、大地の神として國懸があるのかもしれない。
参道から左右に分かれ、両神宮が東西に同じ規模で存在している。
境内入り口 |
参道突き当たりで左右に分かれる |
日前神宮 | 國懸神宮 |
名分上より両社は別個の存在であるが、祭神
並びに由緒上よりは一体不二の間にあり、同一境内に本殿
を異にする二社の大社をなしている。日前神宮は日像鏡を
御霊代として日前大神を斎き祀り、國懸神宮は日矛鏡を御
霊代として國懸大神を斎き祀るとされる。(『大倭本紀』) 日本書紀によれば、神代の昔、天の岩窟の変に際し、天 照大神、素盞嗚尊の荒びを怒り給ひ天の岩戸に隠れ給ひし 時、思兼命思し慮りて、大神の像を造りて招祈き奉るべし とて、石凝姥命を冶工とし天の香山の銅を採りて鋳造せし めしも、神達の御意に合はず、再び鋳たる鏡、その形状美 麗なるによって、これを五百箇真坂樹に懸けて大神を招き 出だしたてまつったと。その初度に鋳たるところは即ちこ の両神宮の御霊代にして、後の鏡は伊勢神宮の御霊代とし て祭祀し奉れる八咫鏡であらせられると(日本書紀)。 社伝によれば、天照大神降臨の時、大神詔して、当宮御 霊代をも三種の神宝とともに副へて降し給ひ、神武天皇は 天道根命を紀伊國造とし、紀伊國名草郡毛見郷に、この 宝鏡を御霊代として大神を祀らせられたのがこの神宮の起 源であって、次いで崇神天皇の五十一年、同郡名草濱の宮 に移し、垂仁天皇の十六年、名草の萬代の宮即ち現在の宮 地に鎮座ましましたといふ。爾来、天道根命の裔たる紀伊 國造によって奉斎せられ、明治の初華族に挙げられて男爵 をたまはり、今に伝へて八十一世に及ぶ。(紀氏系図) −『式内社調査報告』− |
境内に、いくつかの摂末社があるが、判明しているものは少ない。
摂社中言神社 左 名草姫命 | 摂社中言神社 | 摂社中言神社 右 名草彦命 |
末社市戒神社 蛭子神 | 末社松尾神社 | 摂社深草神社 |
摂社天道根命神社 天道根命 | 摂社天道根命神社 社殿 |
両神宮の前の参道脇に、小祠の末社が並んでいる。
傷みがひどく、どの祠が何を祀っているのか、今ではわからない。
昔は、この中に、式内社紀伊國名草郡 麻爲比賣神社に比定される
菟佐神社があったらしい。
境内に並ぶ境内社
参考として、式内社調査報告記載の摂末社をあげておく。
(『官幣大社日前神宮、國懸神宮本紀大略』)
摂社 二十社 | ||||
若宮 | 一座 | 八幡社 | 一座 | |
専女神社 | 一座 | 八御子社 | 一座 | |
穴宮 | 無社芝畳 | 回神 | 無社芝畳 | |
草宮伏拝所 | 無社芝畳 | 深草社 | 一座 | |
今宮 | 一座 | 八幡宮 | 一座 | |
稲荷社 | 一座 | 稲荷社 | 一座 | |
天神社 | 一座 | 高良社 | 一座 | |
住吉社 | 一座 | 熊野社 | 一座 | |
天穂日命・大己貴命 | 一座 | 天道根命 | 一座 | |
蛭子社 | 一座 | 草宮 名草彦命・名草姫命 | 二座 | |
日前宮末社 三十座 | 國懸宮末社 三十座 | |||
天香語山命 | 天太玉命 | 句々逎智命 | 草根姫命 | |
天兒屋根命 | 天櫛玉命 | 軻具突智命 | 埴安姫命 | |
天神玉命 | 天椹野命 | 罔象女命 | 金山彦命 | |
天糠戸命 | 天明玉命 | 級長戸邊命 | 級長津彦命 | |
天村雲命 | 天背男命 | 少童命 | 大山祇命 | |
天御蔭命 | 天造日女命 | 經津主命 | 武甕槌命 | |
天世手命 | 天斗麻彌命 | 闇靇命 | 天熊人命 | |
天斗米命 | 天玉櫛彦命 | 天穂日命 | 天津彦根命 | |
天湯津彦命 | 天神魂命 | 天葺根命 | 豊玉命 | |
天三降命 | 天日神命 | 天日鷲命 | 手置帆負命 | |
天乳速日命 | 天八坂彦命 | 彦狭知命 | 天且一箇命 | |
天伊佐布魂命 | 天伊岐志爾保命 | 天忍日命 | 天槵津大來目命 | |
天治玉命 | 天少彦根命 | 鹽土老翁 | 豊玉彦命 | |
天事湯彦命 | 天表春命 | 天押雲命 | 天神立命 | |
天下春命 | 天月神命 | 式内社調査報告はここまで |